ひとりごと
弐瓶勉『シドニアの騎士』衝撃の2巻
単行本の発売日ってもうちょっとこう出版社ごとにバラけてくれないものでしょうか。
チェックしてる新刊が月末刊行ラッシュでいろいろおっつきません。
今更ながらの個人的に贅沢な愚痴はともかく。
このクオリティでこのスピードで2巻が出るとは、
1巻を読んでいたときには想像もしていなかった『シドニアの騎士』2巻。
すごすぎる。
ああもう何から書いていいかわからない。
読んでて衝撃を受けました。
こんな展開予想してなかったよ! 微塵も予想してなかったよ!
どうなっちゃうんですかこれから。
地球どころか太陽系が破壊されている世界。
舞台は宇宙空間を旅する巨大船シドニア。
シドニアのほかにも人類の繁殖と生産を維持しながら外宇宙に脱出した船は
数百隻あるが、もう何百年も他船との連絡は取れていない。
太陽系を破壊したのは意思の疎通が不可能な外宇宙生命体<寄居子>(ガウナ)。
本体と胞衣で構成されるガウナの生態には謎が多く、
ガウナの破壊はシドニアに28本しかない<カビザシ>という槍でのみ可能。
主人公谷風長道(たにかぜながて)は、シドニアの最下層で
何故か祖父と二人だけで暮らしていた少年。
祖父の死後、いろいろあって、シドニア艦長が身元引受人になり、
ガウナからシドニアを守るための衛人(モリト)という戦闘機の訓練生になる長道。
というところから始まる『シドニアの騎士』、本格的ハードSFです。
世界観の説明はじわじわ出てくる感じなので、
SFを読みなれてない方にはちょっととっつきづらいかもなのです。
そもそも主人公長道が何故祖父とふたり隔離されて暮らしてきたのか、
光合成が出来るように改良された人類の中で何故長道だけできないのか、
長道だけケガの治りが異様に早いのは何故なのか、
そういったことは2巻でもまだ解明されていないものだから、
主人公長道に感情移入はまだなかなか難しいです。
でも作者はこの難しい設定と展開に対して、
我々が入り込みやすい空気を用意してくれています。
それがシドニア内部の、ものすごく綿密な舞台設定。
和風な空間で蕎麦を食べる長道と同級生イザナ。
居住区の描写がすごく「現代日本」なのです。
お祭りがあるなんていうと浴衣で団扇持ってリンゴ飴。
たいへんとっつきやすいです。
生まれも育ちも普通のシドニア人と違う長道にやさしくしてくれるのは、
男でも女でもない可愛いイザナと、
清楚で可憐で優秀な星白閑(ほしじろしずか)のふたりだけ。
星白の可愛い浴衣姿にドキマギする長道の様子を、
ミニ浴衣で妬きながら見守るイザナとか3人とも可愛いです。
だがこの可愛らしい思い出を作った「重力祭り」は
このあと二度と行われることはなかったという――
悲劇の匂いを漂わせた1巻を経て、
発売されたばかりの2巻は、シドニア最強のチームがガウナに全滅させられる、
ハードなシーンから始まります。
なんとか逃げ切るシドニアですが、多くの犠牲が払われました。
祖父と二人だけの生活だった長道にとって、衝撃が続きます。
最強チームが倒されてしまったことで、
訓練生がカビザシの回収に向かうわけですが、
そこで主人公長道が、型落ちながらも由緒ある機体<継衛>(ツグモリ)に乗り、
回収したカビザシで、見事ガウナを倒します。
この瞬間長道は、シドニアの英雄に!
カビザシを持つ継衛の勇壮な後姿。
そして漂流する星白を助けに行く英雄長道。
自分に構っていたら長道も帰還できなくなると思い、
呼びかけに応じなかった星白の健気さが素晴らしい。
やさしくて有能で可愛くて自己犠牲精神の強い大和撫子なヒロイン。
そして二人きりの宇宙空間でなんだか気持ちが盛り上がる少年少女…
継衛に思い入れがあるために長道がムカついてしょうがない岐神(くなと)を筆頭に、
長道は周囲に冷たくあたられることが多いものだから、ハッキリいじめだから、
読んでるほうも星白のやわらかい物腰にずいぶん救われているのです。
もちろんイザナのやさしさにもですが、まあそれはおいおい。
ともかく無事に帰還し、一躍英雄となった長道、見事な掌返しが彼を待っていました。
なんだか突然モテモテな空気も漂い始め、
どうやら長道にフォーリンラブなイザナは気が気じゃありませんが、
星白と長道の間にほんわかなやさしい空気が出来上がっていて、
正直周囲がどれだけ騒いでも入り込む余地はございません。
最強チームが全滅して人手不足のシドニア。
衛人正規操縦士に、
長道と星白、岐神、そして仄焔(ほのかえん)の4人の訓練生が繰り上がります。
チームを組むことになったからには仲良くやろうという空気も生まれ、
ようやく長道がシドニアの一員として迎えられたかに見えた2巻後半――
どうしても継衛の操縦士として長道を認められない岐神の悪巧みの瞬間。
顔だけは美形だがこの人腹の中真っ黒。
岐神の策略にはまって作戦を失敗させた長道に危機が!
気が遠くなっていく長道――――
――そして衝撃の展開が!
詳しくは書けない書きたくない。
いやもうびっくりした繰り返すが全然予想してませんでしたこんな展開。
どうなっちゃうんでしょうか3巻、誰か彼らに救いの手を。
何故カビザシだけガウナに効くのかとか何故28本なのかとか
気になる謎はあるけどそれよりももうなんというか心配でしょうがない。
でもまとめて読みたいから単行本を待つのだけれども
クオリティの高さに対して刊行スピード早いけどでもでも早く続きを!
3巻刊行予定の夏まで待てるでしょうか私!
こんなこと書いてて明日には雑誌読んでるんじゃないか!
今出てるアフタヌーンの表紙が可愛い長道とイザナなんだよなー……
2巻の帯で椎名誠氏が書いていますが、まさしく
激しくてやさしくて
不思議な世界。
ハードSFを読みなれていない方にも是非チャレンジしていただきたい、
鬼才の意欲的な最新作です。
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