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赤城毅『書物法廷』

もうカテゴリに「講談社ノベルズ」って作ったほうがいいんじゃないのか。
我ながら頻度高すぎないか。

ル・シャスールシリーズの一作目、『書物狩人』も文庫化したことだし、
待ってれば文庫化することはわかっているんです。
前回のエントリーに書いたように、できる限り文庫で買おうと
日々自分に言い聞かせているのです。いるのですが。


我慢できなかったよ!


だって私、稀覯本をめぐる物語が大好きなので……


……同じような文章を何度も続けて書いてしまって大変申し訳ありません。
しかしながら!
しかしながら赤城毅先生は実際大学で講師経験もある元歴史学者
膨大な一次資料に裏打ちされた専門知識で以って、
書痴の皆様も必ずや大満足のペダントリィが迎えてくれます。
そのへんあっさりファンタジーで埋めたどこかの本とは違うよ!



手段の合法非合法を問わず、
必ず依頼された本を手に入れる「書物狩人」。
通称「ル・シャスール」(フランス語で狩人)と呼ばれる、
書物狩人の最高峰に位置する謎の男が主人公。
おそらく日本人だと思われるが、
国籍も年齢も本名も、その正体は何もかも不明。

中肉中背、記憶に残らない、美しくも醜くもない容貌。
しかし30前後と目されるその東洋人の髪は、
なぜか美しい銀髪である。
彼を突き動かすのは常に書物に対する美意識。
世に出れば政治や歴史を動かしかねない力を持つ、
書物の秘密――


――という設定でお馴染みの「ル・シャスール」シリーズ。
今回はその第三弾目、『書物法廷』でございます。

今回の本は自費出版の画集、
マフィアの首領が隠し続けた日記、
ポォ研究者の自費出版の研究書、
チャーチルの書き込みのある本。

……いずれも「(別段市場的には価値のない)自費出版」とか
「重要なのは本ではなく書き込みのほう」とか、

「実在する(かもしれない)稀覯本をめぐるミステリ」が読みたい私からすると、
前二作に比べ、いささかパンチの弱いラインナップであることは否めませんが、

それでもいきなりル・シャスールが独房に入ってたり、
とんでもない方向に話が広がっていく二重三重の展開は相変わらずで、

水戸黄門ばりのお約束でル・シャスールが勝つこともわかっているのに、
飽きずにぐいぐい引っ張られます。
それもこれも、作者の博覧強記と、上品な語り口と、本への愛情の賜物!


ここまで素晴らしいペダントリィに満ち満ちた、現実に即した物語となると、
私はキャラクターについている「銀髪」とか「レディ・B」全般に言えるフックは
むしろ物語に邪魔じゃないかな、もっと普通でいいんじゃないかな、
と常々思ってきたのですが、

今まで「美しくもなければ、醜くもない」と言いきってきたはずの
主人公ル・シャスールの容貌の描写が、
この三作目において、
「整っている」に変化しているじゃありませんか!


そしてまあ挿絵の彼の、とんでもない壮絶な美しさときたら……!
「記憶に残らない人」じゃなかったのか、なんだこの妖艶さ。

前作『書物迷宮』における挿絵は非常に漫画チックで、

物語世界と似合わないなあ、むしろ要らないな、
そんな絵より作中で扱われてる本や作家の写真でも載せとくべきだ、

と正直なところ考えていたので、
今回の「作中で言及されてる鳥の絵」とか、ポォやチャーチルの顔、
といった挿絵は大変素晴らしかったと思います。

しかしあの独房で微笑むル・シャスールの美しさからすると、
次回では彼の容貌について、
「目を引く美貌」まで書かないと釣り合いませんよ実際。

おかげで彼が作中でアルカイック・スマイルを浮かべるたびに、
私の頭の中で山岸涼子先生描くところの厩戸王子の顔が出てきます。
怖いよー



水戸黄門ばりと前述しましたがそもそもが短編集なので、
要するに人物紹介的に毎回同じ記述があるんです。

「その国の言葉で狩人を示す通称」でいいとか言いながら、
なんだかんだで最近はずっとフランス語読みさせるんだから、
もうその繰り返し要らなくない?

「なんとお呼びすれば?」
「ル・シャスールと」

でいいんじゃ? と思うんですが、どうなんでしょう。 

しかし微妙に容貌の記述が変わるように、またこの辺も変わってくるのかも。
そのうち日本語で「狩人」と呼ばれたら……
……あずさ2号で帰るのか。ダメかル・シャスールの美意識的に。



赤城先生のご専門はドイツ近代史だそうなので、
どうしても第二次大戦前後の話が多いのですが、
流石に三作目ともなると、正直
ま た ネ オ ナ チ か
という気持ちが沸いてくるのは否定できないところではあります。


稀覯本そのものについての薀蓄をもうちょっと聞きたいという
単なる私個人の好みの問題ではあるのですが、
せっかくドイツ語の一次資料をあたれる語学力をお持ちの先生ですから、
中世英雄叙事詩とか含めもっと昔の話題も今後出てきて欲しいなーと思うのですが、

よく考えたら中世叙事詩で国家転覆とか無理だからダメかル・シャスールの美意識的に。

でもいいです、またネオナチでもいいです、
実在する(かもしれない)稀覯本の話なら。


なんだミスター・クラウンて。


そもそもが偽書、実際は何の価値もない、ってオチが続くのだけはイヤです。
ええ単なる私の個人的好みからの我侭に過ぎないんですけど、
クラウン作の偽書でもいい、せめて本物はどこかにあって欲しい。

せっかくの膨大な情報からなるリアルな物語なのだから、
フックだらけのキャラクター対決ものにはなって欲しくないなあ、と
それだけが心配な今日この頃。



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