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カルバニア物語12巻発売中。

『カルバニア物語12巻』です。
今やすっかりBL専門雑誌と化した「Chara」で、
未だ女の子が頑張ってるただひとつの漫画。

昔はこの雑誌に道原かつみ先生の
コミカライズ『銀河英雄伝説』が連載されていたなど
今となっては何かの冗談のようです。

架空の王国のお姫様と男装の公爵令嬢、
恋の鞘当や渦巻く陰謀、華やかなパーティー、花とドレス。

伝説的なまでに伝統的な「少女漫画」をきっちり踏襲しながら、
TONO先生の淡白な画面と理性的なキャラクターによって、
滑稽にも古臭くもならない不思議な世界観にハマります。

大筋は王女タニアがカルバニア王国で初めての女王になり、
さまざまな偏見や苦悩を、幼馴染である公爵令嬢エキューと
なんだかんだできゃっきゃ笑いながら乗り越えていく物語で、
エキューはなんだかんだでタニアに次いで
カルバニアで初めて女性として爵位を継いだ、女公爵におなり遊ばしまして。

なんだかこうまとめてしまうと、ウーマンリブ推奨漫画(古い表現)みたいですが、
エキューの男装は 以前のエントリーで話題にしたような
昔の少女漫画の典型的なトランスジェンダーではなく。
エキューは女らしさを捨てたわけでも、男より上位に立ちたいわけでもなく。
爵位を継ぐために男として育てられている訳でもまったくなく。

女公爵となってからは今までよりもドレス姿が多く登場するし、
忙しい中恋人であるライアンに逢うためだけに嵐のように馬を走らせ、
恋人に「ドレスで来い」と言われれば反発もせずうっとりと頷き、
タニアの豊かな胸を開けたドレスを見て、
「私もああいうドレスを着る!」と喚いて
デザイナーに胸の貧相さ
嘆かれたり。

きちんと「女の子」だし「女の子らしさ」もまるで否定していない。
自分の中の「女の子」と折り合いをつけているし武器にもできるし、
タイプの男性の前では自発的に
自分を飾り立ててしとやかに振舞ってみせたりする。

彼女の普段の男装姿の理由はただひとつ

「面倒くさい」からである。

古式ゆかしい伝統的な少女漫画の要素に、現在的な理由付け。
ここがTONO先生のさりげなく凄いところなんだろうなと思います。

さて12巻。
初期のおぼこっぷりが嘘のような、出会った頃の葛藤が冗談のような、
すっかりラブラブバカップルな
ライアン・ニックス公爵とエキュー・タンタロット女公爵。
周囲の思惑をよそに、ちゃんと恋愛で盛り上がってる当人が、
「公爵同士で結婚は出来ない」と割り切ってる感じが、
微笑ましいようで大変切ない、妙に理性的なふたり。

エキューが妊娠したらどうするんだろう。
跡取りとしてニックス公爵家と取り合うのか。
女王の生理の問題まであの淡白さで取り上げた
夢の王国の皮を被った現代的なこの物語だから、
連載が続けばエキューの妊娠出産という生々しい話も、
淡白に淡々と取り上げるような気がします。

何が生々しいって今回のタニアの事件。

「だって会ったとたんに、
クスリ盛られてパンツおろされたんですよ」

TONO先生でなけりゃ描けませんわ、こんな話を王国コメディとしてなんて。
このとんでもない話のオチが
「女が大喜びでパンツをおろすような男になれってことさ」なんて。
女のパンツの話で盛り上がる数年ぶりの親子の会話とか。

まあタニアの兄代わりのライアンがムチャクチャ怒ってるし、
予告を見るとエキューがぶん殴ってるみたいなので、
実害がなかったとはいえ
タニアが黙って何事もなかった扱いじゃないみたいで、それは良かった。
無罪放免はダメだよ無罪放免は。

ああそれに比べてパーマーの王子コンラッドの片恋ぶりの純粋なこと。
大概が漫画に登場する「仮面舞踏会」なんて、
「ハメを外す」ための舞台装置であって、
かの「ベルサイユのばら」ですら仮面舞踏会はアントワネットの初不倫の現場。

にもかかわらずコンラッドなんてコンラッドなんて、

(マスクのおかげで目線がわからないのをいいことに
ずっとあなたばかりを見ていた)

「仮面舞踏会」という舞台装置を使って、できたことがそれだけか!
しかも心で思ってるだけでその台詞を伝えることすら出来ない。
もう――泣ける!

公爵同士だからどうせ結婚なんかできないしそんなの知ってるよ、と
逢瀬を楽しむライアン&エキューと違って、
女王タニアと隣国の王位継承者コンラッド
会うこともままならないし、そんなふうに割り切って楽しめる性格でもない。

「子供を作るのは女王の仕事のうち」と淡々と考える悲しい乙女なタニアは、
まだたぶん初恋もしていないのか初恋がライアンなのかってレベルですが、
コンラッドの帰国を寂しく感じてるようなので、
少しはこのふたりに進展があるのでしょうか……
タニアはコンラッドとくっついて欲しいけど可能なんだろうか……

かつてタニアのために寝巻き姿のまま馬を飛ばしたコンラッドだから、
タニアの気持ちさえあれば
王位を弟に譲ってカルバニアに婿入りとか
……してくれないでしょうか!

「タニアの夫になる男は絶対に私よりもハンサムで背も高くて
何もかも優れた男じゃなきゃあいやだ!!」と
怒鳴るライアンだって、
コンラッドならしょうがないと思ってくれるだろうし!

カルバニア物語の良心、切なさ担当コンラッド王子
恋の成就が、
エキューが無事に公爵家を継いだ今、
この物語における私の最大関心事になりつつあります。
 

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