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若竹七海『バベル島』読了。

若竹七海さんと言えば私の中では、
永遠に正解を得られない「50円玉20枚の謎」
日本新本格ミステリ界に押し付けた、
憎い小悪魔という存在なのですが。

この謎を考え続けてもう何年になるだろう……(笑)。


私自身がホラーよりミステリ好きのせいもあるでしょうが、
あのアンソロジーの衝撃が強かったためにやっぱり、
この短編集でもお気に入りは
ミステリ風味の「招き猫対密室」になってしまいます。

……でも酷いタイトルだと思うのこれ。
寡聞にして存じませんが、これ初出もこのタイトルだったの?

という疑問を持ったのは、
巻末の発表順序がバラバラなのにもかかわらず、
11編の短編の、
ラストシーンと次の作品タイトルが連動している仕組み
なってるんじゃないかと愚考するからなんですが。

短編集編纂にあわせて、タイトル変えたり加筆してたりしてないですか?
してないとしたら偶然? うそん。

検索すればもう誰かが書いてるんだろうと思うけど、
あえて調べずに書き出してみようと思ってみた。↓
1 のぞき梅   
     27頁……不意に店内がにおおわれ、冷房の冷気が……

2 影
    46頁……刈り込まれたか、のおばけオーリーに……

3 樹の海
    60頁……杉浦はくしてしばらく黙って……

4  白い顔
    75頁……「人柱、うふふ」……

5 人柱
   106頁 ……代表作は『死刑台のエレベーター』……

6 上下する地獄   
(エレベータの話)
   124頁……足下に座り、とどまり、……

7 ステイ  
(わざわざ文中にステイはとどまるの意、という説明がある)      
   156頁……回れ右をすることも来た道を引き返すことも…… 

8 回来
   184頁……追いかけてきた警官は豊の…… 

9 追いかけっこ
   211頁……密室にとじこめられているような……

10 招き猫対密室
   246頁……土台は壊され……夜中に建築中の……

11 バベル島


↑バベル島は建築途中の塔を夜中に見回る主人とか、塔の土台とかが
物語の根幹となっている、ということなんだけど
最後の方はちょっと苦しい。
苦しいので、作者の意図なのか偶然なのかここでわからなくなる。


でも「人柱」なんてもうむしろタイトルが
無理やりっぽいという印象だったし……

物語自体はよく出来てるしミステリ風味も強く、好きな話なんだけど
タイトルと、それに引っ掛けた作中の

 「会社を守るための人柱」

という一文が
あまりにもとってつけたように浮いてる感が否めない。


短編集だから何か統一感を出したかったのかもしれないけども、
故意だとすると余計な遊びかな、と正直思いました。
解説の人には完璧にスルーされてるあたり。

単に本当に偶然だとすると並びをちょっと考えよう。
特に人柱。


しかし短編集としては普通に面白いです。
奥付見たら初版第一刷だったので、
145頁に

気詰まりになって、。

という謎の一文が載ってるんですが、二版以降は直ってるでしょうか。


こんなに製品管理にうるさい国に住んでいるというのに、
私の手にする本って、誤植だの乱丁だの断裁ミスだのだったりする率が
妙に高いような気がしますが、多分気のせいです。

とここまで書いて、昔、どマイナー少女漫画単行本の、
ものすごい乱丁本に当たってしまったことを思い出したので、
倉庫から発掘したら次回はその話!


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