ひとりごと
天の光はすべて星
8月あたりからなんだか急に私の中で、「古典SFブーム」が訪れております。
アシモフの「裸の太陽」をネットで定価の倍出して買うありさまな。
ジャンルは別にせよ古典ブームはたびたび来ますが、
揃えるのが大変ですね。
しかしネットでだいぶ楽にはなりました。
暇にあかせて神保町をふらふらしてた時代が懐かしい。
そんなわけで「復刻」と聞くととりあえず買ってしまえ、な習性。
今回は私的古典SFブームによりフレドリック・ブラウン。
タイトルがとても印象的な、「天の光はすべて星」。
「スポンサーから一言」をはじめとしてショートショートの名手、の
イメージは多分に漏れず持ってましたが、
長編SFについてはちゃんと読んだことがありませんでした。
わくわくしながら頁を繰り――
――メロドラマだった。
あれ?
いやでもね流石は稀代のストーリーテラーブラウン、
論理的で硬質なSFを読むつもりだった私を、
最後にはきっちり感動させてるからね!
基本、恋愛小説って得意じゃないんだけど、
高年齢カップルにいつの間にか感情移入してうるうるしてたからね!
いやあ最初は、主人公57歳が鼻についてしょうがなかったんです。
古典SFブームじゃなきゃ読むのやめてたかも、という勢いで。
でも最後には、
それが全部ブラウンの計算だったことがわかった。
奇才の掌の上で踊らされてた。
私の中の中二病が同属嫌悪を催すようにわざと仕掛けてある。
だからこそ最後には、主人公60歳に、
あらゆるものを失って漂白されたように力の抜けた彼に
泣けて泣けて。
ある程度歳をとってから、思春期の万能感を失ってから
読むべき物語だな、と思いました。
ハヤカワ文庫の復刻版なんですが
表紙がもう、叙情的で美しいですね。
ラストシーンを読んでから表紙を見返すと、
胸に迫るものがあります。
ただ。
ブラウンのせいか翻訳家のせいか知らないけれど、
「というのは」という文章があまりに多くて途中でちょっと気になったのと、
西暦1999年から2000年は
「世紀の変わり目」じゃないよブラウン。
この二点だけどうにも看過できない(笑)。
あと解説かな。
解説がどうだろうと本文には何の影響もないのですが、
グレンラガンの話しかしてないのはどうかと思う。
特に私のような、件のアニメを
現時点で見ていない者にとっては。
特にSFは若い読者のために、
執筆当時の宇宙開発や社会情勢などを書いてくれる方が
ありがたいと思うんだ。
なにしろSF設定なのに2001年なんて
我々にとってはとうに過去、という状況ですし。
未来に生きてるんだなあ我々。
さて復刻が出るまで町の本屋さんからは
まったくブラウンのブの字も並んでない、
という悲しい状況が続いてましたが、
さすが漫画大国日本、あるんですよねちゃんと。
そんな中でも、名作を読めるチャンスというものは。
実を言うと私などブラウンを先に漫画で読んだという
実に日本人らしい読書体験をしております。
「フレドリック・ブラウンは二度死ぬ」
坂田靖子、橋本多佳子、波津彬子という
わかる人にはわかる組み合わせの豪華執筆陣。
坂田先生の「狂気恐怖症」、
橋本先生の「大失敗」、
波津先生の「黒猫の謎」がいいんだ。素晴らしいんだ。
是非こちらもご一読を!
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